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放送、通信、防災を経て官民連携を考えるひと。

茨城県北芸術祭(日立市エリア)では日鉱記念館にも寄るべき

美人すぎる現代芸術家とどこかで呼ばれてるのかどうかよく知らないが、知人のAKI INOMATAが出展しているKENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭を観に行ったので、これから行くつもりの人に向けて、「日立市エリアに行くなら日鉱記念館をぜひルートに入れるべき」とお勧めしたい。

 

なお、うのしまヴィラという場所に行くことが前提になって、人生で初めて日立市に行くことになったのであって、密かに昔から応援している和田永くんとか、チームラボとかの展示が見たいのであれば日立市に軽く立ち寄ろうとは考えてはいけない。茨城は広い上に、県北芸術祭はひとつひとつの作品が、不安になる程離れている。ドラクエだってもうすこし丁寧だろ、と突っ込みたくなるほど、案内看板も少ないので、自分で運転する人は事前によく予習されたい。以下は僕のように年に数回しか運転しない、都内の軟派なドライバーが意を決して茨城に向かう場合の注意点を含む。

 

東京からのアクセスは2時間。朝から行けば同エリア内で三箇所巡れる。帰りはプラス30分

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今回はカーシェアリングで8時から17時までクルマを押さえて、都内からスタートしてみた。

(あ、運転中はAmanekチャンネルアプリをぜひご利用ください。ドライブソングに困りませんよ)

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相変わらず分岐が忙しなくて怖い首都高を抜けて、アサヒビール筋斗雲を越えれば、常磐自動車道はひたすらまっすぐなのでいつの間にか茨城に辿り着く。行きはほぼ2時間コースだった。昼食にはまだ早いので、日立中央で降りて、思いつきで「日鉱記念館」に行ってみることにする。これがアタリだった。

 

なお、日鉱記念館周辺は一部のキャリアは電波すら届かない山奥なので、GoogleナビとかYahoo!カーナビの人は注意してほしいが、どうせ山道は一本道なので大丈夫だとも思う。茨城に入ったところで適当なPAに立ち寄れば、芸術祭マップが山ほど積んであるので必携。ただし山道は真剣に山道なので、途中でクルマを止めることはできないし、明らかに燃費も悪いので、ちゃんと給油してから行くこと。

 

山奥に佇む日本の重工業の故郷。そして公害との戦いの歴史。

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入口らしきものが突然現れるが、おぉ、着いたと思って正門すぐの第二駐車場に停めてはいけない。そこからかなり先に進んだところに第一駐車場があり、その奥が玄関である。茨城を舐めてはいけない。

 

さて、日鉱とはJXグループができる前の「新日鉱HD」の「日鉱」であり、JOMO、ジャパンエナジーの元の会社のことだ。いまではJX金属と呼ばれているが、実に創業は1905年である。

この記念館の中にも県北芸術祭の作品は展示されているのだが、それはあまり大規模なものではないので、ここでは申し訳ないが説明は省かせていただく。むしろ、この記念館自体の展示があまりにも壮大すぎて、そっちがコンセプチュアルなのだ。

 

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鉱山として開かれた日立であるが、その施設がまんま残されている。しかもアメリカから輸入されたウインチも健在。

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激しいスチームパンク感。

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これ使って普通に人や機材が何百メートルも下まで降りてたわけですよ。

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その隣にある鉱山資料館(建物も当時のままらしい)には、狂気の削岩機コレクション。

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どーんと出てくる日立のロゴ。そう、日立製作所は、日鉱の機械製作所部門から独立した会社なのです。ヤマハからヤマハ発動機ができた話みたいですが、当時から坑道や通勤で使う車両などを作っていたようなので、いまの事業にそのまま繋がってるところもあるのはちょっと驚き。

 

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創業者が住んでいたという(かなりボロい)住居兼本部が残されています。マジで現場のすぐ横でビビる。しかもその隣に作業中に不慮の事故で亡くなられた方の供養をする施設もあって、事業に身を投じる本気度が違う。岩には後年刻んだ「苦心惨憺處」の文字。ぐっと創業期の辛さを思い出して書いた「惨憺」の文字。よほど辛かったに違いない。退職エントリをさらっと書くブロガーとは重みが違います。苦心惨憺、の思いは、この山奥で採掘と共に製鉄業もやっていて、その公害で山が丸ハゲになっていた頃のことを指しているらしい。空気汚染が農業に与える影響などなにも資料がなかった頃で、自社でその影響を模擬施設で実際に計測したり、農家に頼んで作物の上からビニールテント…と思いきや、「障子を張り合わせたもの」をかけて硫黄の含まれる煙で燻してみたりして、探っていたらしい。本気度がやばい。

その結果「これしかない」と一念発起して作ったのが超巨大な煙突。たぶん、当時の感覚で言えばスカイツリー建設くらいのインパクト。いまは残念ながら老朽化で取り壊されているけれど、森は植林の甲斐もあってほぼ完全に回復している。雰囲気だけのCSRではない、本気の問題解決に触れて、自社の活動を振り返って恥じたりする。

 

ちなみに美しい本館は築三十年余り。こちらは撮影して良いのか微妙だったので写真は割愛しますが、建物自体も建築賞もので見所多いです。展示物の中にしれっと混ざってる「孫文と文通してた頃の手紙」がヤバい。孫正義からフォローされたとかで喜んでる場合ではない。孫文である。放送業界にいるとマネージャーさんとフェイスブックで友達になることがあるので、「もしかしてお友達ですか?」に芸能人のプライベートアカウントらしきものが出ることがたまにあるんだけど、孫文クラスが「友達ですか?」にでてきたら、そっとブラウザを閉じるしかない。

 

話が脱線してきたので、うのしまヴィラに向かう。

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 AKI INOMATAの展示があるうのしまヴィラは、日鉱記念館から車で15から20分くらい。なお、この間にガソリンスタンドはなかったので念のため申し添えておきたい。

 

ちょうど正午に着いたのがよくなかったのだが、駐車場待ちが発生していた。ちゃんと警備員を立てて整理してくれていたのはありがたい。海際の素敵なところ。宿泊施設があるので一度泊まってみたい。

風呂は残念ながら宿泊客にしか貸していない模様。ランチは激混みで30分ほど待った。待っている間に作品鑑賞したのでよいのだけど、何組かは諦めて帰った。あと、サイトに載っている海産物はランチには出ない。ランチは洋食メイン。地元の野菜など使っているようで美味しいけど、海産物がご希望の方は、違うところを探した方が良い。とはいえ、日立の展示をめぐると、結局ここしかないのでむずかしい。

 

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AKI INOMATAの作品は、既発作品でヤドカリに3Dプリンタで出力した貝を着せるものなのだが、目の前が海なので、今回はヤドカリに実際に住んでいただいてる様子が生体展示されている。

うのしまヴィラでAKI INOMATAの作品を確認。生体展示は初めて見た。海の見える綺麗な建物で、あるべきところで展示されている感。

とても素敵なので、ぜひ現地でご覧いただきたい。

ここまでで午後2時。帰りを考えると、あと一箇所寄れるかどうかなので、近くにある日立駅に寄ってみる。駅周辺の駐車場はどれも30分百円なので、適当に停めて、駅構内に入る。さすがにエスカレーターはすべて日立製作所だった。

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駅構内がすごい色になっているのも作品。この駅自体も著名な建築なのだけど、それをさらにいじるのがヤバい。ちなみに駅の反対側にあるシビックセンターも、バブル工業感溢れるデザインなので確認されたい。

すごいいろにされてしまった日立駅。もちろん、この動く歩道は日立製作所製です。

 

おみやげは日立煎餅で。

駅の反対側には観光センターもある。本来は最初にここに来ていろいろ案内を受ければいいのだけど、僕の目的はお土産の確保。いろいろ売ってますがここは一択、日立煎餅で。なお、地元のお菓子屋さんが昔から作っているもので、日立製作所のライセンスプロダクトではないようす。

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日立のロゴの隣の丸は日鉱の旗章です。現代的だな。

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中はこんな感じ。

 

帰りは渋滞やらなにやらで都内まで2時間半。日立市にはこんな機会がなければ一度も行くことはなかったかもしれませんが、楽しめました。鉱物マニアも、重機マニアも、アートファンも、それぞれに楽しめると思います。改めて、百年前の日本人のフロンティア精神やばい。

 

BoT(Broadcast of Things)の時代へ

だいぶ間が空いてしまいました。新放送サービスi-dioの立ち上げに関わり、送信設備の開発からコンテンツプロバイダの開拓まで、慌ただしく動いています。放送業界とウェブ業界を8年間行き来してきましたが、両方混ぜこぜにやるサービスを本気で自分で作ることになったのは、なんの因果なのか…。

 

http://www.i-dio.jp

 

さて、i-dioは「移動受信向け地上基幹放送」に分類される放送で、テレビ、ラジオしかなかった放送業界に新しく生まれたカテゴリです。ISDB-TsbによるIPデータキャスト放送をVHF-Low帯で提供するソフト・ハード分離型のブロック別放送、ということになりますが、ほとんどの方には何を言っているのか全く分からないと思います。私も全容の把握に難儀しました。

 

いまのところ、デジタルラジオに似たサービスを提供しているのでわかりにくいのですが、その本質は、IoT機器向けのデータキャスト放送を安価に行う、下り回線専門のネットワークオペレーションを売りにする会社、というのが適切なところです。たとえば気象データを農業センサーに提供する。たとえば災害情報をスマートハウスに提供して防災に役立てる。そんな用途があります。

 

サービスごとに設計レベルから考えられる放送。そんなありえないほど自由な世界は、要するに物理層からソフトウエアレベルまでの知識を必要とする難儀な世界で、日々自分の能力の欠如を痛感していますが、なんとかやっています。

 

近況は、また今度。

Pontaフリーケアプログラムってどうよ

ロイヤリティマーケティングから「Pontaフリーケアプログラム」の無料保障を贈呈します、というレターが届き、仕事柄どういうデータマイニングをして送付先を選定したのか興味が湧いたので、ちょっと調べてみた。

Pontaフリーケアプログラムとはなにか

チューリッヒ保険会社を引受人とする無料3年間の団体保険。『交通事故等で入院時30000円を一時金を受け取れる』と書いてあるが、よく引受条件を読むと、「5日以上の入院」「交通事故、駅構内の事故、車両火災」に限られる。通勤中なら労災になるし、運転中なら自動車保険があるし、鉄道が火災なんて起こしたら鉄道会社の補償があるはずなので、この保険を受取って「よかったー」となるシーンはあまり思いつかない。

誰に送ってるのか

Twitterで検索した感じだと、たぶんPonta会員全員に送っているわけではない。もしや毎日ローソンストアで晩御飯を買っているので、食べているもので健康状態を推定して送ってきているのでは!と思ったけど、これ交通事故保険なので、そもそも加入申込書に健康状態を記載する欄自体がない。(もしあったら私は入院歴があるのでそもそも加入できない)たぶん利用金額ベースで抽出してるだけですね。

同様の保険の案内は、楽天KCとかマルイとか、年会費無料のクレジットカード会社が提携してカード付帯サービスの一環かのように送っているパターンが多い模様。最近旅行保険が付帯されているクレジットカードが減っている気がするし*1、確かになんとなくいいもののように見えるのかもしれない。
ただ、カード会社がこのサービスを提携して提供する最大のメリットは「月額500円の追加補償」プランがあるからのような気がしていて、テンプレで使いまわしているらしい申込書には、追加プラン用にでかでかとクレカの番号を書く欄がある。この手数料収入が提携するカード会社側の最大の目当てなのかも。Pontaのようにクレカ機能のないカードのイシュアーがこういうサービスを積極的に提案するメリットは何なんだろうと改めて不思議に思ったけど、保険代理店として三菱商事インシュアランスが挟まっているようなので、そこの手数料収益が目的の様子。さすが商社。


いずれにせよ、追加補償プラン(入院日額5500円+賠償責任補償最高1億円)は保険料が割高だし、私は会社が広告業のおつきあい的なアレでいろんな団体保険をかけているので入ることはないのですが、カード会社のいろんな会員情報ビジネスは、ますます進化しているなぁと思ったのでした。

*1:私は旅行保険にいちいち入る習慣がないので、支払いに使うことを条件に保険が付帯されるクレカで支払いをして旅行に行くことが多いのでこれはけっこう困っています。ゴールドカードにはよく自動付帯されているけど、そんな金持ちじゃないし…

東芝FlashAirとMaker Faire Tokyo 2014の関係

前日になってIntelが注目のデバイス「Intel Edision」を無料配布すると突然発表して騒然となったMaker Faire Tokyo 2014


Edison無償配布の公式ワークショップ開催 | Edison Lab |

蓋をあけてみたらきょうの配布数はたったの36個でして、開場段階で300人近く入場待機していたわけで、瞬殺でした。まぁ、そうだよね。明日行く人もあんまり期待しないほうがいいと思います。会場内で出店やってるスイッチサイエンスさんで普通に買えますし。

その一方、Intelの隣でスポンサー出展していたのが東芝。Makeのサイトでスポンサードしているのは確認していたけど、正直何出してるんだろうと思ったら、FlashAirをゴニョゴニョすると、もともとSDスロットで動くWifi+HTTPサーバだし、しかもRaspberry Piと連動させたりしてデバイスの制御とかできちゃうよ!という衝撃の同人誌を配りまくってる。XBeeぐらいしかなかったDIY向き組み込み系無線LANデバイスに、いきなりビックカメラでも売ってる汎用機器が使えるようになっちゃうわけです。不勉強なことに全く知りませんでした。ガチのコンピュータをワンチップに詰め込んできたIntelに対して、かなり独特なアプローチ。
と、ここまでなら東芝の社員さん面白いなぁ、で終わるのですが、この同人誌、よく読むと社内事情が結構赤裸々に書いてあり、大変興味深いのです。

要約すると、

  • FlashAirを普及させるキラーコンテンツを探していた
  • 組み込み系で使えるように改造したら面白いよ!と思った人が他部署にいたけど、東芝はSDカードコンソーシアムのメンバーで仕様を逸脱するなんてことは自分では絶対にできないので、例のオレンジ色のWiFi-SDカードに後塵を拝していた
  • が、気がついたら担当事業部がゴリゴリ実装していて、いつの間にか隠しファイルをいじるとSDのI/Fから直接いろいろゴニョゴニョできるように。東芝すげぇ
  • IOT分野のキラーコンテンツは何が当たるのか(範囲も広すぎるので)全然見当がつかないので、OSSの世界で貢献していくことで、自分たちにもヒントが見つかると考えている
  • というわけで、ガンガン仕様公開するよ

ということらしい。OSSの世界で活躍している日本企業というと、Hadoopのコミットメントで世界上位に入っているNTTデータみたいなところが想起されますが、これまでのOSSへの企業の参加というと、社員の技術レベルの向上だったり、それによる企業内のノウハウの蓄積みたいなところに直接的な利害の一致があったような気がします。あるいは参加している社員の履歴書の充実。
それがIOTの分野になると、数多のスタートアップがゴリゴリモックアップを作って市場を創ろうと模索しているところなので、東芝みたいな超巨大企業になると、同じ規模でトライ&エラーをしていても身の丈になかなかあわないから、一個人では(電波法の制約などもあり)開発しにくいWiFiみたいなパーツを提供することで、OSSの世界を通じて市場のニーズを見極めようという作戦なんですね。IOTってそういう側面もあるのか、と、新たな視点を得た気がしました。

ところでこの冊子、もう一つオチがついていて、同人業界で基盤を配ったりするなんてことは東芝としてはやったことがないから、保証とか免責などでいろいろ法務的な作業に行き詰まって、困り果てて有名な同人作家に相談してみたら、「あ、この人東芝の社員だった」という。東芝ぐらい大きな会社だとそんなこともあるんですね…。


僕の本業はラジオ局の編成という部署でマーケティングとかWebコンテンツの開発とかアライアンスの構築をすることにあるんですが、ラジオは人類史上最初でおそらく最後の、個人が受信機を作ることが出来る放送メディアだろうと思っています。はんだごてを握って最初に作るのはラジオだと相場が決まっていたはずなのですが、Makeの会場でラジオ受信機を展示している人は、残念ながら1人もいません。これは結構ヤバイと思っていまして、会社のイベントでもラジオ工作教室を開催したりしてみていた時期もあったのですが、なかなか予算が続くものでもないので、なにか考えなきゃなぁと思っています。

半個人サークルで同人誌をコミケで出すみたいなこともしているのですが、今回の東芝さんの冊子は本当にしっかりとした作りで、頭がさがる思いです。Microsoftさんはコミケの出展は完全に業務時間外に準備していた、なんてエピソードもありますが、東芝さんも社内調整、大変だったんだろうなぁ…(と、きっちり表4に入っている純広らしきものを眺めながら思う)。


余談1。隣の西4ホールでやってた豆腐&大豆食品フェアが非常に良いイベントでした。豆腐の試食はもとより、おでんとかベジミート丼とかネバネバ丼とか、フードコートも充実しています。受付なし(IDをもらうだけ)で無料で入れるので、ギークのみなさんはヘルシーなランチを隣で食べるといいと思います。あと、豆腐生産マシンの展示が楽しいです。

余談2。明和電機のライブが実は最大の目的だったのですが、会長(兄)が出演しててびっくりした。いつの間に復帰したんですか?

余談3。17時からビッグサイトのプロジェクション・マッピングをやっていて、事前に知らなかったのですが結構よかったです。これはあしたはやってないようで、今日行った人は得しましたね。

http://www.bigsight.jp/top_news/pdf/news_info141029.pdf


追記(11/24 10:30)
FMラジオの展示、あったとのご指摘を頂きました。しかもダイレクトにデジタルでソフトウェアエンコードしてる…!大変失礼しました。見落としてました。



LPC4370 LPC-Link2でFMラジオの実装に成功しました! - Computer Radio RF Tech