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FUJII / Blog

ラジオとソーシャルメディアのあいだに。

ソーシャルゲームの方法論をテレビに。2012年末年始テレビ×Web企画

本年も何卒よろしくお願いいたします。

年末年始、久々にテレビを見る機会が増えていますが、今年は各社、工夫を凝らした実験的なWeb連携企画を展開してますね。関係者のみなさま、おつかれさまです。

個人的に気になっているものをいくつか…と思ったけど、並べてみたらNHKばかりだった。

スマートフォンアプリ NHK紅白 | 第62回 NHK紅白歌合戦

紅白NHK公式アプリ。ついにらじる★らじるが始まって、音声だけとはいえ紅白が完全ウェブストリーミングされた年になりましたね…らじる★らじるアプリと連動していたらもっと面白かったのですが、そもそも地デジとらじるとアナログラジオでかなり遅延差が出ていたので、難しいかなぁ…。
視聴者投票はケータイの事前募集と地デジが中心で、スマフォからの当日投票は機能として用意しなかったようですが、60秒間でどれだけクエリを捌けるか、キャパシティが課題でしょうか。
舞台裏カメラ機能が用意されていましたが、実際には曲目名が表示されるだけだったようです。おそらく設計時と意図が違うと思うのですが、こんどゆっくり聞かせてください>中の人。
YouTubeが紅白連動の新聞全面広告を打ってきたり、チームラボがAR演出を担当したパートがあったり、Web業界の人には時代を感じるシーンが多い紅白でした*1

双方向クイズ 天下統一

今回の年末年始番組でもっとも注目しているのがこれです。「データ放送連動クイズ番組」から一歩踏み込んで、

  1. スタジオの正解・不正解よりも視聴者の正解率を優先
  2. オンタイム以外にも仕掛け作りをして、事前問題をクリアすると本番で有利になるアイテムを配布
  3. 参加者のインセンティブとして、地デジデータ放送内でアバターアイテムや城下町づくりゲームのゲーム内インセンティブを配布

などなど。データ放送はやったところで出費が増える一方なので、民放よりもNHKのほうがトライしやすい分野ではあると思いますが、かなり挑戦的な内容。
最近映画のデータ放送でよくある「継続視聴でマイルがたまって最後にプレゼントに応募できる」「放送内でクイズを出題」などの方法では、継続視聴率を稼いだり、HDRに録画してもこういった部分は再現できない場合が多い*2ので、リアルタイムで視聴するインセンティブにはなるのかもしれないけど、視聴者ひとりの単位時間あたりの顧客価値が根本的に増大するわけではなかったと思います(むしろ映像の画面狭くなってるし)。

この番組の場合は、事前番宣として放送波で非同期的にソーシャルゲーム風のものをサービスしておいて、当日の参加にむすびつける手法をとっているわけで、要するにゲームの「ボス戦」の部分を同期的に提供しようという試み。事前に視聴者がこのコンテンツに投じている時間がそのまま期待として持ち込まれることになるし、民放ならプレコンテンツの部分も含めて、全体にスポンサーをつけられるような構造になっている。2011年にソーシャルゲームで流行した要素を徹底的にデータ放送に移植した形になっていて、Mobageって今年のベイスターズの野球中継にこういう手法を取り入れるのかもな、と頭をよぎった。

おやすみ日本 - NHK総合

おはよう日本」を擁する公共放送が深夜に「視聴者が全員寝るまで終わらない番組」をつくるという斬新な構想はさておき、「眠いいね」ボタンが気になる。
Webサイトに最近はもういいよってぐらいつけられている、各種ソーシャルメディアのシェアボタンは、ぼくもウェブマスター時代にこれでもかってぐらい実装しまくったけど、実は読者が積極的に押す理由付けがほとんどなくて、そこから目を逸らしたいがゆえに、押す理由として「ゲーミフィケーション」という言葉がバズってる印象があります。選択的な消費でライフスタイルを表現する人々はイケてるサイトをシェアしまくるのでしょうが、だってあなたのサイトの商品は別にカッコよくな(ry
地デジの「dボタン」も、なかなか押してもらえないボタンの時代が長かったように思いますし、いまのところ地デジのデータ放送「から→」ウェブサービス側に連携させた事例というのは聞いたことがないので、「dボタンを○○さんが押したよ!」とかソーシャルメディア経由で通知されるようなことも当分ないだろうなぁ、と思うのですが、とにかく「テレビ局側にだけ押した事実が通知される」ボタンを、なんとなく受動的に番組を見ているだけの人がわざわざ押す理由が薄かった。
この番組が促しているのは「番組を観ていて眠くなってきたら眠いいねボタンを押してください(ただし何回でも可)」というかなり矛盾したオーダーで、まぁそれはネタだからいいんだけど、意見とかクイズの回答とかでなく、「ねたおきたたべた」系の、いちばんパブリックから遠いライフログをマスメディアで集めるというのはこれから起こりうることだとおもう。いつだって生理的欲求はコンテンツとして強いし。
ねたおきたで思い出した。Pathを使っていて優れているなと感じるのは「眠りにつく」ボタンを押すと画面にでっかい月がでてきて何もできなくなるところ*3で、自分も相手も寝ようとしているところにソーシャルを持ち込まないように出来てる。2012年はdisconnectがビジネスになる、と、ある人が言っていたけど、こういうことか!と思った。

『イマつぶ』『みるぞう』『tuneTV』に『踊る大捜査線 特設ページ』を開設! - とれたてフジテレビ

ほとんどNHKネタだったのでひとつだけ。イマつぶは今後どうしたいんだろう、というのはさておき、tuneTVは今年、急に存在感を出してきた印象。紅白でも出稿あったようだし(TwitterのPromoted Trendまで買わなくていいじゃん、とは思ったけど)。使ってみると、これまでいろいろな会社がトライしてきた、「テレビのとある瞬間に対して言及するのに、どこにPermalinkを見出せばいいのか」問題に対して*4、「その瞬間のハッシュタグの魚拓を見せればはやいじゃん」という自己言及的な解を出しているところが鮮やかだと思った*5。インターフェイスもこれまでのいろいろなサービスの集大成っぽくなってる。

もう少し見つけたら書き足します。

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以下1/13追記。

NHK NEWS WEB「NEWS WEB 24」

通常は定時ニュース(NEWS24)を放送している時間に、津田大介をゲストに招いてNHKニュースWEBのアクセスランキング順にあくまでも「NHKニュース」フォーマットのニュースを紹介し、Twitterのハッシュタグで募集したコメントを拾う、という企画。Twitterのタイムラインとアクセスランキングで作られている「毎日RT」にコンセプトは似ている。
アクセスランキングベースで編集するのはテレビのキュレーションの役割放棄なんじゃと思う人もいるだろうけど、ニュースを批判的に観てみる訓練をNHKが自らやってるということなんじゃないかなぁと思う。ふつうにニュースみてたら、ニュースの紹介順なんかみんな気にしてないよね。ストレートニュースであっても、テレビニュースにはどうしても特定の目線や印象が入る。それを相対化するような作りになるんじゃないだろうか。ちなみに「おやすみ日本」はTwitterの投稿はデータ放送で紹介していたが、この番組ではユニバーサルデザインを強く意識しているNHKでは例外的と思われる小さな字幕でインポーズされていた。見ることを強制される作り。そのつくりの違いも、意識的なものではないだろうか。

字幕は強力な「RT」みたいなもの。2画面方式(テレビ+スマホ)でニュースを見ていた人は「別に画面にTwitterを出さなくても連動はすでに実現されている」という趣旨のコメントをしていたけど、番組の視線を相対化するという意味ではTwitterを「みていない」層にこそ価値のある企画ともいえる。(その場合、コメントの選定の仕方が本当に難しいが)

放送局にとって莫大なリソースのかかる定時ニュースの編成をかえるのは難事業。24時に短時間でテストをしたのはやむを得ない物理的制限と考えて、欧米で増えてるふつうのニュースにツイート字幕を出す手法の基本的なメリット・デメリットをまず議論したほうがいいと思うのだけど、ハッシュタグは「24時のニュースは大事な情報源だから野心的な企画で潰さないでくれ」という声多し。

やっぱりこの類の双方向ニュースは、ラジオのワイド番組でやるのが落ち着くな、とは思った。テレビのふつうのニュースを改革する意欲には惜しみない拍手を送るけど、難易度は高そう。