FUJII / Blog

ラジオとソーシャルメディアのあいだに。

PS VitaとPodcast

前回のエントリの続き。

あまり知られていないように思うのですが、PSPにはPodcastRSSチャンネル、とか以前ソニーは呼んでいましたが)の購読機能がついています。

筆者がウェブまわりを昨年夏まで担当していたTOKYO FMでは、PSP公式対応のPodcastサイトをわざわざ用意していました。需要あるの?とあなどるなかれ、SCEの公式ポータルからリンクされていたこともあり、それなりのダウンロード数があったのです。

TFMのPodcastはちょっと変態的なぐらいにマルチデバイス対応を推進していて、JFNの基幹局ということもあり、ラジオとウェブの連携に必要なメタデータの技術仕様の策定にも積極的です。

しかし、なぜかPS VitaではこのPodcast機能が外されてしまったのでした。将来的にアプリケーションが配布される可能性はあると思いますが、Playstation Storeでのビデオ販売、torneと連携しての書き出し機能、ニコニコ公式アプリの配布(近々生放送の配信もできるようになるらしい!)など、メディアプレイヤー系の機能が充実している中で、なぜかPodcastだけが落とされてしまった。

Podcastがビジネスにならなかったと言われて久しいですし、iTunes StoreのPodcastカテゴリぐらいしかまともなプロモーションメディアがないのも事実なのですが、個人的にはPodcastの仕組みは今でも非常に重要だと思っています。

Podcastが重要な役割を果たしたのは、他ならぬ東日本大震災でした。

震災を受けてJFN系列で放送が始まった政府広報番組「震災情報 官邸発」。当初はJFN系FM局での放送だったのが、一気に被災地AM各局、各地のコミュニティFM・災害臨時局にもネットワークが広がりました。当然、系列を超えての番組配信には通常の配信機器が使えるはずもなく、一部のステーションにはWeb経由で取り急ぎの配信網が構築されました。
このとき、同時にPodcast配信も緊急に立ち上げ、SCEApple US本社それぞれのご好意で、PSPブラウザトップ、iTunes Storeトップの両方から一斉にダウンロードリンクが貼られたのでした。両社とも連絡を入れ次第、かなりのスピードで対応してくださり、いまでも感謝しきれない思いです。

震災情報 官邸発、PodcastはPSPでもお聞きいただけます。ソニーコンピュータエンタテイメントのご協力で、PSPポータ... on Twitpic

刻々と変わる情勢の中、多忙を極める枝野官房長官(当時)自らが直接国民に向けて毎日収録して放送する、という、極めて例外的で緊張を強いられる番組でしたが、優秀なスタッフに支えられて、連日、系列/非系列局/radikoをはじめとするサイマルキャスト/Podcast/政府広報オンラインと、ありったけの手段で配信し続けられたのは、ラジオマン冥利に尽きる仕事でした。

ところで、災害時におけるPodcastの強みは、「蓄積型で一度ダウンロードすれば繰り返し聴くことができること」「いつでも全編をダウンロードできること」です。被災地ではテレビやラジオは基本的に生放送をつけっぱなしですから「大事なお知らせを繰り返して伝える」ことがなかなかできません(のちにデジタルサイネージを導入した自治体もありました)。政府がラジオ番組と平行して展開した壁新聞は、輸送上の課題と、多人数が一斉に見れない、視覚障碍者に届かない、という課題がありました。ネットワークさえきていれば、Podcastで配信して、その端末を拡声器なり、館内放送なりで何度でも聴かせることができる、というメリットがあります。
スマートフォンでも同じ事はできますが、携帯電話の限りあるバッテリーは誰だって、被災直後は他の用途に使いたいもの。PS Vitaのような、大容量のバッテリーを積んでいて、しかも通信機能が搭載されているけど、被災直後には用途が薄いデバイスに、Podcastをダウンロードする役割を担って欲しいのです。

いざ災害が発生したときに、運良く電源状態のいい携帯電話やラジオを持ち歩いているとは限りません。一つでも多く、いざというときに情報を届けるデバイスを確保するために、PS Vitaには近いうちにPodcast機能が搭載されることを、願っています。