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天気の子。

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英題が「Weathering with you」だけど、これは「君と風化させる」じゃなくて、新海監督は「君と乗り越える」と訳して欲しいらしい。

 


「秒速五センチメートル」の発表試写にも仕事にかこつけて行ったし、種子島聖地巡礼した程度にはかぶれているので、彼がどのように「平成のセカイ系」を総括するのか、楽しみに観に行きました。あいちトリエンナーレのアレとかで東浩紀とかが総括してくれそうにもない状況だし。

 


以下軽いネタバレ。

 

 

 

セカイ系に必要な「きみとぼくの距離」を表すものとして、初期にはロケット、そのあとはひたすら電車と踏切、あるいはホームを多用してきた新海誠だけど、今回は線路を走っちゃったり、わりと電車は距離のメタファーに使われない。それでもRADWIMPSのMVはJR東全面協力でこれ以上ないロケで撮られてるし(よく探したなぁ)、山手線内を舞台にするとどうしても踏切は少ないし、代わりに使われる「距離の装置」が今回はフェリー。でも案外淡白な扱い。このへん新海節が発揮されないのは全体尺の問題なのか?

愛にできることはまだあるかい RADWIMPS MV - YouTube

 


セカイ系にも関わらずオトナがわりと味方についたりするので、車やバイクもよく出てきた。それでも今回は時間でも、速さでも、距離でもなく、「空とぼく」の距離と主人公は闘ってるので、横に移動できても距離は詰められない。縦横時間と全部使い切ったので、次にセカイ系作品を作るとしたら、パラレルワールドしかないな。(君の名は。って、あれ一応世界線は1つしかない前提ですよね?彼ら今回カメオで出てきたし。)

 


あ、いや、今回満を持してJ企が製作委員会に入ってるので、つぎも鉄道ネタは入ってくるんだろうか。J企がポケモン以外でアニメ制作に関わったのは珍しいと思うし、プロダクトプレイスメントにも汗をかいていたので、次回も頑張って欲しい。そういう健全な夏休み映画にも関わらず拳銃が無防備に出て来たり未成年をラブホに泊めて補導させたりするのは、STORYが頑張った成果なのだと思うけど、どういう意図で必要としたシーンなのかはちょっと掘り下げが足りなかったかもしれない。

 


主人公を中学生にしなければならなかった理由も少しわからなかった。親権で揉めてるシングルファザーと、親戚の女子大生のねーちゃんと対比させるのに、高校生だと自我が強すぎたんだろうか。まぁ、このへんのご都合感が観る人によって「どこかでやったエロゲの劇場版感」を醸したのだろうと思う。

 

 

以下重大なネタバレ。

 

 

 

基本的にセカイ系とは「世界と彼女どっちをとるのか」という基本的な構造を持つわけだが、今作は「彼女を取って東京が滅びるのに、わりとみんな普通に生活しており」、「お前のせいじゃない、深く考えるな」と周囲のオトナになだめられる、という意外な結末を迎える。「中2の世界=島から出てきたお前が観たトーキョーなんて井の中の蛙の世界でしかない」とはっきり提示してしまう。

 

水に沈んだトーキョーは、わりとあっさり、モノローグで「3年後」と処理されて提示される。セカンドインパクト後の旧東京を見慣れてしまっている僕らにはなんとなく「それでも日本って滅びないんだろうな」と受け入れられてしまうわけだが、「世界が、終わるのよ…」とリツコが絶望気味に語るサードインパクトとはだいぶ対比的なあっさり感。


上映前の特報で流れるシンエヴァの映像にはほんの一瞬しか碇シンジが出てこないのだけど、2020年6月、シンジくんが世界をもう一度滅ぼすのか、救うのかで、平成のセカイ系は本当の総括を迎えるのかもしれない。映画の主題歌でどんなに歌い尽くされても愛にできることはまだある、とRADWIMPSは歌うけど、失われたホゲ10年を生きてきた中2たちは、令和の時代にどんな絶望と距離を超えて、きみとぼくのセカイを救う「物語」を紡ぐのだろう。